COLUMN
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笛を吹いてアルコール
『残りもの』
三福に行った。次の約束まで30〜40分しか空き時間がなかったけど、とりあえず行った。時刻は17:30。「今日は30分しか居られないんです」と言いながら入店すると、レジ付近にいた藤田さんから「というか、まだ24時間経ってないぞ」と言われた。前日の閉店際に来たばかりなのに、今日も明るいうちからノコノコとやって来たからだ(ちなみに、藤田さんのこのセリフを僕はよく聞く=実際にこんなことを頻繁に繰り返しているから)。ファーストオーダーでつくねを頼んだら、藤田さんと(ホールスタッフの)ミスタに笑われた。なぜかというと、前夜にもつくねを頼んだからだ。前夜は藤田さんに「串焼きがつくねしかない」と言われたので「じゃあ、つくね下さい。塩で」とオーダーした。今日はまだ夕方だから他の串焼きもあるのに、僕がつくねを注文したのが可笑しかったらしい。「きのうはつくねしかなかった(他は品切れだったのに、つくねだけが15本も残っていたらしい)から分かるけどよぉ、今日は他の串もあるのに、なんでまたつくねなの?」と藤田さんは言った。僕は淀みない口調で「だって、今日もつくねが残ったら可哀想じゃないですか。あと、昨日は塩(味)で頼んだけど、今日はタレ(味)ですし」と答えた。藤田さんやミスタの他、周りの客も笑っていた。「繰り返し同じものを食べるのが好きなんです、いいんです」と言いながら、僕はチューハイのジョッキを傾けた。
(在店可能な)残り時間が20分くらいになったところで唐揚げを頼んだら、またもや藤田さんとミスタが笑った。これもつくねと同じ理由で、前日にも「唐揚げならあるよ」と言われて素直に「じゃあ、唐揚げで」と注文したからだ。「何なの?他のメニューは食べないの?」と藤田さんが笑いながらに訊いてきたが、たぶん同じ返答があると思ったのだろう。諦めて途中で訊くのを止めた。
つくねのタレ(2本)と唐揚げを平らげ、チューハイを3杯飲んで、お会計をコールしたら、横にいたホールスタッフのフォンが「もう30分経った?」と聞いてきた。「いま29分です」と答えたら、みんなが笑っていた。僕は三福を訪れるとき、店の人みんなが笑顔であればいいな(特別に笑わせようとするわけでもなく)と思っている。それは、客としてのサービス精神とかではなく、ただ単に(お店も事務所も持っていない僕とは違って)毎日お店を開け続けている人々のことを素直に尊敬しているからだ。
2025.11.18