COLUMN
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笛を吹いてアルコール
『ニューエラという言語』
三福で飲んでいると、入口から若者。
「あのー、スミマセン。昨日、来て。あのー、ニューエラのバケハ、忘れたんスヨ」
受けて、藤田さん。
「え?」
若者が続ける。
「あのー、忘れたんスヨ。バケハ…。バケ…えっと、帽子っス」
藤田さん、黙ってカウンター下の棚から(これかな?という様子で)帽子を取り出す。黒い帽子に施されたニューエラの白い刺繍が若者に見えるように“バケハ”の向きを変える。
「あ、ソレっすネ。あらまス!」
と、受け取って帰る若者。
藤田さんは70歳前後だ。相手に分かるような言語で喋った方がいいよね。「ニューエラ」「バケハ」はお前たちの勝手な共通言語だ。言葉は道具。使い方が分からなければ、それはただの雑音だろうよ。使い方を知った方が、結果的にお前も得をする。村にいてもいいけど、村が村だということを知っていた方が、得をする。覚えておけ。村の外の世界はお前が思うほどには、狭くない。共通は、もっと広い。お前が思うよりも、ずっとな。
言葉の種類の多さを誇るよりも、むしろ、伝わる言葉を10知っておけばそれで済むことが世の中には沢山ある。笑顔で済むことにおいては、言わずもがな。
と、飲みながら5分ほどで走り書きしたコラム以下の、単なる雑記。
2024.07.12