column『忘却とラザニア』
column『忘却とラザニア』
秋。夕暮れ。三福のカウンター席に座って、かつおの刺身とか、(この店にしては珍しい)ミミガーとかを食べながらチューハイのジョッキをあおっていた。しばらく経って、もう1杯半飲んだら席を立とうと思い、最後のフードオーダーは何にしようかとぼんやり考えていた。つくねタレ。豚バラ串。ハムカツ。目の前に貼り出されたメニューを見ながら、なんとなく思いを巡らせていたところ、5つ隣のカウンター席付近から「ラザニア、イッチョ!」というオーダーが通る声が聞こえてきた。ぁあ、ラザニアね。この店のラザニアは家庭料理的というか、三福は薄汚いやきとん屋なので当たり前なんだけど、たまに見かける「うちのラザニアは洒落たビストロ風……